シニアライフ、小説に学ぶ豊かな老後 ・・・ 第8弾は 「すぐ死ぬんだから」 内館牧子

シニアライフ、小説に学ぶ豊かな老後 ・・・ 第8弾は 「すぐ死ぬんだから」 内館牧子 定年小説・ノウハウ本

定年後はどうするか?このような未経験の事を考えるときは情報収集?勉強?シニアライフ老後参考書としては定年・還暦・高齢者をテーマにした小説も見逃せません。

日常生活の喜怒哀楽を描き、私たちにいろんなことを考えさせてくれる参考書であり楽しい娯楽作品です。前回、第7弾小説に学ぶ「老害の人」に続き、内館牧子さんの「すぐ死ぬんだから」のご紹介です。

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「すぐ死ぬんだから」 内館牧子

著者の内館さんについては前回の第7弾でご紹介させて頂きましたので、そちらをご参照ください。

高齢者小説と呼ばれる、内館さんの4作品「終わった人」「すぐ死ぬんだから」「今度生まれたら」「老害の人」から、今回は3つ目のご紹介となります。

ドキッとするタイトル、最初からググっと引き寄せられるストレートなご指摘、今回も歯に衣着せぬ心地よい響きで、ページがどんどん進みます。

納得、共感できるご指摘は自分や周りの人たちと比較して考えさせられますし、何より元気がもらえるところがいいですね。高齢者に前期も後期も無いと思わせてくれます。

そして、ストーリーは途中で思わぬ展開へ。こうなると一気読みモードで、やめられなくなりました。

シニアの参考書としても小説としても楽しめる作品。最後は泣けます、感動します。是非ご覧ください。

あとがきで内館さんは「すぐ死ぬんだから」というセリフは、高齢者にとって免罪符であると仰っていて、ご自分の経験も語られています。外見にこだわる大切さ、説得力のある「あとがき」も見逃せません。

今回もネタバレにならない程度に、シニアライフに参考となる心に残った名言の数々、名場面を切り取って、過去の振り返り、これからの人生について考えてみたいと思います。

若く見られることが大事

六十代に入ったら、男も女も絶対に実年齢に見られてはならない。
             ~中略~
絶対に七十八には見えない。自身がある。それだけの努力はしているし、気合いも入れている。


p2

年相応という言葉がありますが、冒頭から「実年齢に見られてはならない」とグサッと刺さるフレーズが登場します。考えてみると、年相応と言われても基準があるわけではありません。若く見える人、老けて見える人、人それぞれ。

若く見える人は、見た目だけではなく話題も豊富で話し方も元気で好感が持てる方が多い気がします。外見だけじゃなく中身も魅力的な方が多いですね。天性ではなく努力の賜物なのでしょう。

本書にあるとおり、努力・自身・気合が必要なのかも。気力、体力、身だしなみ、ファッションにも気を使って豊かな老後を送りたいですね。ハードルは高いですが、すぐ死ぬんだからを言い訳にしないように心がけます。

裏表紙イラスト

年を取ることは退化

「そうですねえ、外見を磨くことを忘れたくないって言うか。年を取るということは退化ですから」

p6

銀座でファッション雑誌の取材を受けることになりハナは舞い上がります。スタッフから、「どんな年の取り方をしたいとお思いですか?」の質問対する答えがこれ。年を取ることは退化という表現がストレートでさすがです。退化をカバーできるのは外見磨きだと。

衰えるというのは嫌な言葉ですが、退化は衰えと思ってあきらめてはいけないと教えられます。外見を磨き、気持を若く保ち、経験で知力も充実させる、何だか明るい老後が見えてくる気がしてきました。

何でも老化のせいにして言い訳をする、そうじゃなくてポジティブに生きる老後を目指そうと思わせてくれます。

話は変わりますが、ファッション雑誌の街頭でのインタビュー。昔、メンズクラブというファッション雑誌の名物コーナーで「街のアイビーリーガース」というのがありました。何とか載ってみたいとあこがれたものです。読者スナップの元祖かと。VANジャケット全盛の頃が懐かしいです。今もありますので、今度買ってみようかな。

MEN’S CLUB (メンズクラブ) 2024年5月号 (発売日2024年04月10日)
「MEN’S CLUB」は単なるファッション提案してきたのではなく、日本人男性の生活にどう取り入れられるのか、ということに真剣に向き合ってきました唯一の男性ファッション誌と自負します。当然、欧米人と日...ReadMore

使うべきことがあるだろう

その後ろ姿は、へたって薄い髪と古びたスーツ、スーパーで売っているような安いペタンコ靴で、「老後」の今、貯金より使うべきことがあるだろうと思わせるに十分だった。

p16

これは、同窓会で同級生を評価した厳しいお言葉。「貯金より使うべきことがあるだろう」は納得です。年を取ると誰しも先々が不安で、貯金がお守りのような存在になっている方が多いのでは。

60代の私もそうですが、必要最低限な事以外にお金は使わなくなってきます。月に一回だった床屋さんは二か月に一回に、衣類はブランドショップからファストファッションへ、靴もあまり買わなくなりました。

節約は決して悪い事ではないと思いますが、節約という名のもとに外見へのこだわりの気持ちが薄らいでいる自分に気が付きます。楽したい、面倒だ、これって自分の都合に合わせているだけ。

若さでごまかせる歳ではなくなりました。この歳になれば自分磨きもしっかり考えないと周りの方にも失礼なのかもしれません。貯金だけではなく、使うべき事には使うようにしなきゃダメですね。反省。

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ババくささは伝染る

「ババくささは伝染る」というのは、こういうことなのだ。まわりがみんなそうだから、何の疑問も持たない事なのだ。もしも、カッコいいシニアの中で生きていれば、常に我が身をふり返るのではないか。

p64

同調圧力という言葉がよく問題になりますが、「ババくささ」もかと考えさせられました。もちろん「じじくささ」も同様です、伝染るでしょう。今の社会は周囲の環境に自分の行動や価値観が左右されることは多いです。特に、私の世代は周りに合わせることは大切だと教わってきましたし。

でも、本書にあるように、周りの環境を良くすれば自分も影響されて、いい方向に向いていくということも考えられます。他人ではなく自分の為に考えること、参考にしたいと思いました。

ただ、周りにカッコいいシニアがいるかが問題。探すのも大変そうですし、その場に入っていくのも相当な勇気と努力が必要そうです。チャレンジが大切だということか。

利害関係なども考えて、付き合う相手を選べなかった現役時代と違って今は自由の身。今更ながら、周囲に染まらない自分らしい価値観を磨いていきたいものです。

こんな雰囲気、無理かな。。。

楽しまなければ損

先がないから、すぐ死ぬからこそ、「バカバカしい」と思ってはならないのだ。すぐ死ぬんだから偽装を貫き、楽しまなければ損なのだ。

p234

よくよく考えてみれば、人間いつ死ぬかは分かりません。高齢者になると過去は長く未来は短くなります。すぐ死ぬかどうかは分かりませんが、今が一番大切だということを改めて教えてくれるのがこの件です。

偽装を貫く、自分磨き、若く見せる努力はやめちゃいけないのだ、楽しまなければ損なのだ。内館さんは死という言葉を使って、生きる大切さや意味を教えてくれます、勇気を与えてくれます。

もっと元気に、前向きに、歳に負けない気力と体力を持つ。老いて生きることへのモチベーション、自己否定や自己放棄は絶対に避けて通る、老後の自分に自信を持つことの大切さを学ばせて頂いた、ありがたい小説でした。

NHK プレミアムドラマ

「すぐ死ぬんだから」はNHKプレミアムドラマで放映もされました。主演のハナ78歳役を三田佳子さん、その他、小野武彦さん、松下由樹さん、小松政夫さん、溝端淳平さんと豪華キャストです。

プレミアムドラマ すぐ死ぬんだから|番組|NHKアーカイブス
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2020年の放送だったんですね、全5回の放送です。残念ながら私は見ていないので、オンデマンドで見てみようと思います、便利な時代になりました。

定年小説とよばれるジャンル、楽しめる作品はたくさんあります。次回は垣谷美雨さんの「定年オヤジ改造計画」を紹介したいと思います。私としては、少々読むことに恐怖を抱くタイトルですが(笑)

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