シニアライフ 老化に負けない豊かな老後 第3弾「最高の体調」 鈴木祐

シニアライフ 老化に負けない豊かな老後 第3弾「最高の体調」 鈴木祐 老化に負けない
photo by ゆう

人生100年時代、この言葉もすっかり定着してきました。120歳まで見えてきているとも。
しかし、何もしなくて成り行きで長生きできる訳ではありません。
寿命が延びることは喜ばしいのですが、大切なのは健康寿命を延ばすこと。
幸せな老後を過ごす条件です。

「いつまでも若くありたい」というのは昔から人としての願望です。
今は情報化時代、多くの老化対策に関する情報があふれています。
最新の情報を入手して豊かな老後への準備を進めていきましょう。

前回の第2弾「70歳が老化の分かれ道」に続き、今回ご紹介するのはこちら。
鈴木祐さんの「最高の体調」です。
サブタイトルには100の科学的メソッドと40の体験的スキルから編み出したとあります。
具体的な老後生活の参考書として有効と思われるところがたくさん紹介されています。

私なりに刺さった部分、実践しようと思っている事や感じたことを要約してみたいと思います。
豊かな老後を過ごすための秘訣、学びましょう。

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最高の体調 鈴木祐

鈴木さんはご自身のブログ「パレオな男」で健康や科学に関する知見を紹介されているサイエンスライター。
出版社勤務を経て独立。数多くの科学論文読破、海外の学者へのインタビューを重ねヘルスケアをテーマとした書籍や雑誌を執筆。エビデンスを基にした内容が好評でブックライティングで手がけた書籍は100冊超え。

本書の「はじめに」で現代人が抱える問題について下記のように述べられています。

鬱病、肥満、散漫な集中力、慢性疲労、モチベーションの低下、不眠、弱い意志力など、一見バラバラのように見える問題も、根っこまで下りてみれば実は同じもの。
すべては一本の線でつながっています。
そして、その正体を暴くカギが、「文明病」という考え方なのです。

p5

本書はこれらの問題を総合的にアプローチしていくものです。
筆者も本書の知識を実践しつづけ、結果、人生を良い方向に変えてきたとのこと。

鈴木祐さんは、体調不良改善の為に

  • 狩猟採集民の食事を目指し加工食品をやめ
  • 精製穀物の量も減らし
  • 野菜や魚の量を増やし
  • 間食はゆで卵で代用
  • 食物繊維が豊富なさつまいもを主食に
  • さらに早歩きウォーキングや筋トレの運動を取り入れ
  • 仕上げはメンタルの改善

これら取り組みに成功され、人生でもっともリラックスした時間を過ごせているそうです。

取組内容については、すでに知られている内容が多いかもしれませんが実践し続けるのは難しい問題。
テクニックのつまみ食い状態は、ハンドルやブレーキの扱い方がわかっても、すべてをまとめて使えなければ車は動かないようなものだと仰っています。

ベースに有るのが「ヒトはどう進化してきたのか?」
この進化論にもとづくヒトの理解です。

文明病について一章で理解を深め、二章で不調の原因「炎症と不安」について解説しています。
3章から5章で「炎症」の問題を解決するガイドラインとして「腸」「環境」「ストレス」
6章から8章で「不安」の問題を解決するために「価値」「死」「遊び」
それぞれに焦点を当て心理的トラップを逃れる方法について考えていきます。
とても興味深い内容ですがすべては紹介できません。
興味を持たれた方は、ぜひ本書をお手に取りご覧になってください。

文明病

「文明病」とは、近代社会の変化によって引き起こされる、現代に特有の病気や症状を意味します。もっとも典型的な例は肥満です。ここまで肥満が普通になった理由は、もちろん社会が豊かになったからに他なりません。

p22

「進化医学」の射程距離は、たんに肥満の謎解きだけにとどまりません。体の不調だけでなく、心のトラブルや脳のパフォーマンス低下も、やはり進化のミスマッチが原因だと考えられるからです。

p26

毎日朝から晩まで働いて会社と家の往復、飲み会ではネガティブな話ばかり、そして〆のラーメン、ストレス満載の日々、私だけではないのではないでしょうか。こんな生活を続けていましたが、幸い今日まで大病にかかったことはありません。身体にいいことと言えばタバコをやめたことぐらいです。
ラッキーだっただけで、これからツケが回って来そうです。

現在社会においてはこのように多くの矛盾を抱え心と体は蝕まれていきます。
自業自得と思っていたのですが、本書では「悪いのは自分だ」という考え方を採用しないとのこと。
どうゆうことでしょう。それは、原因は現代人に特有の「文明病」だからということです。

こう考えると物質的な豊かさを手に入れたものの、はらった代償は大きいのかもしれませんね。
著者もこのような状況にあり体調不良でしたが、旧石器時代の食事法で健康を取り戻したそうです。

問題解決へのステップはシンプルで下記の2段階
・自分が抱える問題について、どこの遺伝のミスマッチがあるかを特定する
・ミスマッチを起こしている環境を、遺伝に沿うように修正する
この2段階をこなせばほとんどの問題解決し、肥満は解消し、集中力と生産性も改善されるとのこと。

現代人にありがちな不調の原因を大きく2つの要素に分類し個別の対処法を見ていきます。
それは、文明病を引き起こす要素となる「炎症」と「不安」。

炎症とは

あなたが転んでヒザを擦りむいたとしましょう。すると、その直後からケガをした部分にジクジクと液体が染み出し、軽い痛みとともに皮膚は赤く腫れ上がってきます。これが「炎症」です。大事なのは、炎症が体の表面だけに起きる現象ではない点です。

p40

この炎症は誰にでも経験があるのでわかりますが、身体の表面だけではなく外傷の他、アレルギー、風邪など免疫システムがウイルスと戦うものも炎症によるパフォーマンスの低下ということ。
これは今回初めて知りました。また、内臓脂肪も減らない限り体はジワジワ燃え続け血管や細胞が炎症性物質で傷つくことになるそうです。内臓脂肪は「異物」でしかないと。
このような恐ろしい状態を作っていることが、早くわかっていれば現在のメタボ体形は避けられたかも。
今からでも遅くないと思って対処法を学び努力をする気になりました。

長寿な人は炎症のレベルが低く、健康的に年を取るには「炎症対策」がもっとも大事。
この炎症で面白いのは狩猟採集民と現代人ではちがう事だそうです。
現代の日本人は体内で延々とくすぶる長期的な炎症がメイン。それに対して外傷や感染による短中期的な炎症がメインの狩猟採集民は慢性炎症に由来する病気がほぼ存在しないと報告されています。

古代と現代で違うものは何でしょう?
現代人に多すぎるものとして「カロリー」
少なすぎるものとして「睡眠」
新しすぎるものとして「トランス脂肪酸」と「孤独」があげられています

多すぎる「カロリー」は皮下脂肪や内臓脂肪として貯蓄され炎症サイクルにはまり込んでいきます。
少ない「睡眠」は体内の炎症マーカーが激増します。「トランス脂肪酸」は肝臓の働きを乱し「孤独」は脳が脅威に感じ抵抗を始め、免疫システムを過剰に働かせ炎症につながっていきます。
この仕組みを理解することが大切です。原因をしっかりと捉え意識するようにしたいものです。

不安とは

要するに、原始的な社会ではどのように不安を解決すべきかが明確なのです。
芥川龍之介の「ぼんやりした不安」を現代的な不安とするならば、原始的な不安は「はっきりした不安」と言えるかもしれません。

p59

原始の不安は猛獣の危険や毒性の草、食料の不安など「はっきりとした不安」でシンプルで対処しやすいもの。
一方現代の不安は、仕事やコミュニケーション、将来の不安、SNSにおいては無数のユーザーからバッシングを受けるなど心理的なダメージの質と量は、古代の世界とは比べものになりません。
「ぼんやりした不安」が現代的な不安ということになります。
ぼんやりした不安は記憶力を低下させ、理性的な判断力を奪い、死期を早めます。

では「不安」の存在意義はなんでしょう。
あらゆる出来事に対して生存の危機を察知し事前に対策を取れるよう
「アラーム」としての役目。これが「不安」です。

不安の質が変わった現代では、うまく機能が動作せずアラームが誤作動を起こし、頭の中で非常ベルが鳴りっぱなし状態。目の前に迫った危険への対策をうながすシステムでしたが、現在は将来のお金や仕事、死への不安、すなわち遠い不安を抱くことが問題なのかもしれません。

狩猟から農耕が開始され、人類の生活は一変しました。
もっとも現代人への影響が大きいのが「時間感覚の変化」。
農耕を効率よく進めるために遠い未来を思い描く必要が出てきたわけです。
ぼんやりした不安が脳に炎症を起こし、そのせいで増強された不安が、さらなる炎症の火種に変わる・・・
この負のスパイラルを断ち切らなければ現代人のパフォーマンスは低下し続けることになります。

炎症の原因

腸内細菌がなければ、私たちの免疫システムは攻撃も防御もままなりません。
ところが、人類の暮らしが近代化するなかで、このシステムに不調が出て来ました。
その根っこにあるのが「リーキーガット」という症状です。

p80

これは腸の細胞に細かな穴が開いてしまう現象で、免疫システムが作動し体内のあらゆるエリアに慢性的な炎症を発生させ「疲れやすい」体に悩まされることになります。

対処方法は、食生活を再野生化して腸を守ることだと。
腸内細菌と仲良くするとして、抗生物質を無闇に使わない、抗菌グッズや殺菌グッズの排除、空気をきれいに保つなど示されています。また、腸内細菌をもてなすと称し、発酵食品、納豆・ヨーグルト・キムチを食べる、サプリのプロバイオテックス、食物繊維の摂取を推奨されています。

環境

現代の環境と遺伝のミスマッチには色々なものが考えられます。
そのすべてに対策をとるのは現実的ではないため、現代人への影響が大きい2つの環境に的を絞ります。それは「自然」と「友人」です。

p108

対処方法は自然とのふれあいと友人です。
自然はデジタルの自然でも有効でPCの壁紙を山や海の画像にしたり、川のせせらぎ音や鳥の鳴き声を聞くようにすると効果があるそうです。部屋に観葉植物を置いたり、公園出かけたり、陽の光を浴びるのも有効で年に3回より4回くらいキャンプや山登り、魚釣りに出掛けることを推奨しています。

人づきあいが苦手でも、200時間ほどコミュニケーションを重ねればたいていは深い仲になれるそうです。
コミュニティに参加することで親密度もアップします。相手への相談という形で話を振っていくと自然に親密さを深めることも出来るそうです。信頼関係が築けることが大切です。

ストレス

ストレスは人を殺します。
ある朝、目を覚ました妻がいつものようにリビングへ行くと、そこにはソファで冷たくなった夫の姿が。あわてて救急車を呼ぶも時すでに遅く、夫は大動脈瘤破裂で早朝には命を落としていたことが明らかになります。解剖や精密検査でも原因はわからず、彼の死は謎のままに処理されることに・・・・。

p146

睡眠中やリラックス時には脈拍と血圧は下がります。進化の過程で獲得してきたシステムです。
ところが、精神的にストレスがかかった状態だと心臓のエンジンはふかしっぱなしとなり、夜も休むヒマがありません。心臓や血管に過度な負担がかかり、現代の突然死につながります。

ストレスも病気と同じように応急処置と根本治療の2つを使い分ける必要があります。
仕事や職場の人間関係といった日々のストレスは応急処置でしのぎつつ
並行して柔軟なメンタルを長期的に作り上げていく必要があります。

対処法は進化論の視点、治療法は多岐にわたります。
緊張を感じたら「興奮してきた!」と言い換えてみる。
「リアプレイザル」で脳をストレスに強くする手法、感情の筋トレです。

ストレス反応は決して悪者ではありません。問題は慢性化してしまうことにあります。
対処法を駆使してストレスコントロールを心掛けましょう。

不安の原因

農耕によって生まれた「未来」が現代人の「ぼんやりとした不安」を生みだし、古代と違って未来の感覚が遠くなったため、先の見えない不安が生まれるわけです。時間間隔の変化です。
狩猟採集民の未来は1日単位で先行きの不安は生まれません。すべてが現在なのです。

私たちは今から原始の感覚には戻れません。
出来る不安対策の基本戦略は「未来を今に近づける」です

未来との心理的距離が近いものほど不安に強く、セルフコントロール能力も高いという事実があります。
これら対処法として価値観や畏敬や自己観察、マインドフルネス、遊びの感覚を取り戻し遠くなった未来を現在に近づけるなど多くの対処法も示されています。

まとめ

人生なんて狩猟採集民時代からの時を考えれば、ほんの一瞬の出来事。
体はこの長い歴史によって受け継がれてきた人類の遺伝子レベルで出来ている。
私が生まれてから63年。この一瞬で、どれだけ世の中が変わったことか。
身体も精神も追いつかない訳です。病気になるのが当たり前ということか。

便利で刺激的で楽しい世の中だけど、本当にこのままでいいのか?改めて考えさせられました。
狩猟採集民の時代まで時は戻せませんが、50年くらい戻すだけでも状況は一変するんじゃないかと。
このまま体調不良と医療の進歩の綱引きが続き寿命だけが延びていく世の中。
誰も良しとは思っていないでしょう。

とは言っても、現実はそう簡単には変えられない訳で出来る事から実践していこうと思います。

  • 腹八分目から七分目
  • 納豆、キムチ、ヨーグルトを食べる
  • 定期的なウォーキング、日光浴、たまに低山トレッキング
  • 良質な睡眠を意識する(睡眠アプリでチェック)、昼寝(目を閉じて15分でも可)
  • 部屋に空気清浄機と観葉植物を置く
  • 過剰に薬を頼らない
  • 長く付き合える友人関係を続ける
  • 嫌な事はポジティブワードに置き換える
  • 未来の自分の身になって考える
  • マインドフルに家事を手伝う
  • イフゼン・プランニングの書き出し 「もしXが起きたら、Yをやる」
  • 就寝前1時間はデジタルデドックス

最後に私事で恐縮ですが、教科書から外れて自分の歴史を振り返ってみます。
徹夜でプレゼン資料作成、たばこ、愚痴の飲み会、朝帰り、深夜のラーメン、牛丼大盛、立ち食いそばの日々、売上ノルマ、営業成績のプレッシャー、上司の叱咤激励・・叱咤・叱咤、休日は昼まで寝てる。

思えば、私の時代はこの本に書いてある悪いことをお手本のように実践していた毎日。
今日まで、よく生きてこられたな~と改めて思いました。
丈夫な子供に生んでくれてありがとう、おかあさん。って感じ。改めて感謝です。
でも、最高の体調・・今からでも間に合うのだろうか?負債が多すぎる気も。

「公園で陽の光を浴びながらパートナーと未来ではなく、いま、ここの事を話す。
お腹がすいたら、自作のおにぎり1個とキムチを少し摘まんで、デザートはヨーグルト。
そして、軽くウォーキングしながら帰宅し湯船につかってスマホは見ないでベッドで熟睡」

こんな教科書どおりの生活ちょっと想像できないけど、、これで幸せか???
改めて、自分の価値を追求し見直してみようという気持ちになりました。

かって学生から「人間は何のために生きているのか?」
と質問されたアインシュタイン博士は、こともなげに答えました。
「他人の役に立つためです。そんなことがわからないんですか?」

エピローグ p287

著者は、遺伝子が定めるルールのなかで幸福を最大化させるには、「抜苦与楽」が最適解なのでしょう。
と述べられ上記の引用で締めくくられています。
深いです。

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