シニアも学ぼう テクノロジー その2 世界2.0 メタバースの歩き方と創り方 佐藤航陽

世界2.0 シニアの参考書
photo by ゆう

時代は変わりドンドン便利な事が増える一方で、新しい事を学び実践しなければ時代についていけないことも多く出てきました。テクノロジーの進歩はすさまじく、新しい技術を知らないで過ごす手はありません。

シニアが新しいテクノロジーの使い方を習得することは残りの人生を素晴らしいものにしてくれるはず。
大切なのは好きなことやおもしろいことを探求すること。
現役の時とは目的が違い楽しむための勉強でありたいですね。

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世界2.0 メタバースの歩き方と創り方 佐藤航陽

バズワード、意味が良く分からくて定義が定まっていない言葉のことですが、Facebookが社名をMetaに変えたこともあり「メタバース」はバズワードとして一気に拡がりよく聞くフレーズとなりました。
確かに意味が良く分かりませんが、人はそれをどのように受け止めるのでしょうか。

このメタバースというバズワード、著者によれば人間の態度はだいたい3つに分かれるとのこと。

  1. シニアに多いのが「チャラチャラした言葉はけしからん」
  2. 若者は「自分とってプラスになるのであれば活かしてみよう」
  3. ミドル層は一応は知ってはいるけど、くだらないものでしょう」

なるほど・・・確かに私も思い当たることはあります。反省。
経験則上、2番目の態度以外に得られるものは何もないそうです。
われわれシニアは固定概念を取っ払って、まずは知ることから始めなくてはいけないようです。
GAFAのうち2社が兆円単位で投資しているわけですから、「けしからん」と切り捨てられない事態です。

著者の佐藤航陽さんは、大学在学中にIT企業を設立しビッグデータ解析やオンライン決済の事業を展開し東証マザーズに上場。その後、宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業、 代表取締役社長として「テクノロジーで新しい宇宙を創り出す」ことを目的に研究開発を続けていらっしゃいます。
20万部を超えるベストセラーとなった著書の『お金2.0』は、2018年ビジネス書売上日本一を記録しています。

今回ご紹介する世界2.0は幻冬舎から発売され、編集が箕輪さんということもあり何かと話題も多い注目本。
本書でも紹介されている「希望の国のエクソダス」の著者村上龍さんも「この本から、新しい地平線と、新しい夕日が見える。」と推薦されています。

本書の構成は下記の通り

序 章 メタバースとは何か?
第一章 メタバースの衝撃
第二章 世界の創り方 I【視空間】
第三章 世界の創り方 II【生態系】
第四章 競争から創造の世紀へ
第五章 ポストメタバースの新世界
終章 世界の真実は自分の目で確かめるべき

前回その1では國光さんの著書よりメタバースやWeb3についての基本的な事を学ばせて頂きました。
本著も言葉の説明やメタバースの概念や技術的な事が書かれています。
興味深いのは「メタバースとは世界を創造すること」とあること。

「世界とは何なのか」「世界とはどう動いているのか」という自然・人間・歴史などの普遍的な法則を理解しなければならない、情報として知るだけでは理解したことにならないと。

「世界を創る」というときの「世界」は
目で見て触れて五感で感じる「空間」としての世界
国家や社会やコミュニティのように人間の頭の中にある「生態系」としての世界

両方合わせて私たちが住むこの現実世界が創られており意味をもっているとおっしゃっています。
このあたりが特に興味深いですね、頑張って進めていきましょう。

序章 メタバースとは何か テクノロジーの進化を予測する方法

メタバースの意味については前回の「メタバースとWeb3」で学んでいますので、この章はテクノロジーの進化についてみていきたいと思います。

未来そのものを予測するのは難しいが、コンピュータを軸としたテクノロジーを予測することは実は高い確率で可能とおっしゃってます。本書を読み進めるための前提知識であり土台と位置付けていますのでまずはここから確認していきましょう。この導入部分は門外漢の初心者にとってはありがたい構成ですね。

あらゆるテクノロジーの本質的な特徴は、次の3つに絞られます。テクノロジーは
①人間を拡張するものであること
②いずれ人間を教育し始めること
③てのひらから始まり、宇宙へと広がっていく

p17

手足の動力を拡張した蒸気や電力からテクノロジーはコンピュータへ、これは「動力革命」から脳内における「知能革命」だとも。テクノロジーは人間の能力をより拡張させていってます。

人間の拡張として、個体の能力を超える計算能力をコンピュータによって手に入れる。
人間を教育しはじめるとして、人間がテクノロジーに合わせて生活スタイルを変える。
宇宙へと広がっていくとして、拡張は「身体の近く」から始まり移動手段、重力を離れ空から宇宙へ。

また、テクノロジー浸透は意思決定の身軽さと関係しており、消費者→企業→行政への順番で導入。
ただし、進化の予測は経済的な成功とはイコールではない、大切なのはタイミング。
ここが大切なポイントだと思いますが適切なタイミングを読むことは難しい課題です。

我々シニアは産業革命から世界大戦を経て迎えた戦後の高度成長期に頑張ってるお父さんを見ながら子供時代をすごしました。そして、学生時代から社会人へと大人の階段を上っている時期はテクノロジーがパーソナルコンピュータへ一気に進んだ時代です。バブルという洗礼も浴びました。
この手足から脳内へ広がっていくという説明はとても実感として納得できる内容でした。

第一章 メタバースの衝撃 メタバースは「神の民主化」 

世界宗教は「世界は神様が創造した」と信奉してきました。
メタバースが形づくる「もう一つの世界」は、神様が創造するわけではありません。
メタバースを作るのは人間です。つまり世界を創造するという「神の民主化」なのです。

p67

テクノロジーの役割は「一部の特権階級だけが独占していた能力を民主化すること」
メディアが第四の権力と呼ばれていたがインターネットの登場で →「情報の民主化」
キャンプファイヤーのようなクラウドファンディングは →「金融の民主化」
検索エンジンは →「知識を民主化」
仮想通貨は →「お金を民主化」
そしてメタバースは →「神の民主化」ということです。

自分のことを振り返っても、情報はテレビ・新聞・ラジオからネットへの比重が高まっています。
通勤電車、朝は日経、帰りはゲンダイ、帰宅後テレビでビール飲みながらニュース番組、こんな習慣や調べ物で図書館や書店へ行ったり、同僚や上司に聞くことなどすっかり少なくなりました。
今の生活様式は明らかに特定の者に依存する習慣が薄らいできています。
お金も仮想通貨で国境がなくなる日も近そうですし、銀行からの借り入れ形態も変わっていくんでしょう。

残るは神の領域といわれる世界を創っていくということなんでしょうか。。。
世界は神様が創造した、それが我々の手に。神の民主化とは言い得て妙ですね。

神様のように世界を創るとなると相当の覚悟が必要と身構えてしまうシニアの私がいます。
そもそも世界って何なのか、考えてみる機会も今迄の人生ではありませんでしたから。
しかし、目の前のことを処理することに忙殺していた我々の世代にとっては魅力的なことです。
ハードルは高そうですが、次章からの「世界の創り方」が楽しみです。

第二章  世界の創り方 I【視空間】

世界とは、視認できるビジュアルとしての「視空間」と、社会的な機能と役割を持つ「生態系」が融合したものです。具体的には、視空間とは観光地や大自然・旅行に行ける場所などを指します。生態系とは、国家や社会・共同体・家族・サークルやサロンのことです。

p121

メタバースは、視空間+生態系の合わせ技で構築しなければなりません。設計は非常に難易度が高いです。そして、人間の目に映る視空間を要素分解すると、さらに「人間(アバター)」「景色(フィールド)」の二つに分けられます。

p122

視空間において、人間は他の人間には関心度が高く肌や表情の変化にはピンとくるが世界の背景には鈍感である。この特性がメタバース空間を作るときの重要なポイントとなるとのこと。

3DCDを駆使したメタバース空間に入っても昔みたいに違和感をあまり感じなくなったのは、確かに人の動きが現実に近づいたからだと、先日あるメタバース空間に入ったときに私も実感しました。

それに対して、背景など景色はあまり気にならなかったのはなぜなんでしょうか。
例えば東京なら東京タワーやスカイツリー、渋谷の街なら109とランドマーク的なものが目に入るだけで場所として認識してしまうという人の特性が理由の様で、この「〇〇っぽさ」が大切だと。

英語圏では横書きだから看板は横、漢字圏では縦書きだから看板は縦、町の風景の看板が縦の物が多ければアジアの街の風景のイメージになると佐藤さんが説明されていましたが、なるほど納得です。

バーチャル空間とは言え、現実との類似点がないと人は作品の世界観に没入して心から楽しめないという主張もゲームや映画で経験していますから理解できますね。

第三章 世界の創り方 II【生態系】

この章からが一番興味深く理解することが大切です。但し相当ボリュームがあるので一部しか、それも簡単にしか紹介できません。ぜひ本書を手に取ってこの部分をじっくり読んでいただくことをおすすめします。

うまく回っている生態系の特徴

①自律的であること
指示や命令がなくても個々の参加者が自分で考えて行動し、改善を繰り返すことができます。外部からの指示にしたがって生態系が回るのではなく、まるで集団そのものに意思があるかのように動くことができる。

p159

②有機的であること
それぞれの参加者がお互いに連携しながら、一つの生態系全体を成り立たせていること、つまり生態系が有機的であることもポイントです。
生命と同様に、生態系もそこに参加する各人が交流しながら、全体を形づくっていくものです。

p159

③分散的であること
生態系の真ん中に、常に指示をする司令塔がなければ成り立たない。こうゆう生態系は、司令塔を失った瞬間大混乱に陥ります。分散的な生態系は、司令塔なんて必要ありません。指揮官がどこにもいなくても、全体が止まることなく動き続けます。

p160

上手く回っている生態系の特徴としてこの3つを上げています。
ピラミッド型のカリスマ上司が率いる組織で働いてきたシニアからは見ると思わず笑みがこぼれる記述です。

私が過ごしてきた組織でも自律的で有機的で分散的な要素は少なからずありましたが、これだけだとスピード感がなくて苦労した経験があります。時にはカリスマの求心力がロケットスタートを生み、他に抜きんでて勝利を収める時があったわけです。ただ著者がおっしゃる通りカリスマの存在が無くなれば弱体化するもろい構造であったことは否めません。

やはりこれからの時代、仕組みとして、参加者にはそれぞれの明確な役割があり、自分の為に自分で考えて行動する。これが大切になってくるのは間違いなさそうです。

私のようなシニアがこのロジックで行動できるか考えてみた場合、真っ先に浮かんだのが上司の顔であり、回りからの評価でした。この呪縛を解くことから始めること、ここですね。
ここだけの話、再雇用の身だと意外と出来そうな気がしてくるんです。
責任が軽くなったからという意味ではなくて価値観含めて景色が変わったような気がしています。

価値をやりとりする存在として、生態系にはざっくりいって2つのタイプの参加者が存在します。
第一に、先ほど申し上げた3種類の価値を作って提供する「価値の生産者」です。
第二に、その価値を買ったり見たり聞いたり評価したりする「価値の消費者」も存在します。

p167

生態系とはシンプルに言い換えれば「価値あるものをやりとりする環境」であるとのこと。
上記、3種類の価値とは、1.実用的価値(儲かる・役に立つ)、2.感情的価値(共感できる・ポジティブになる)、3.社会的価値(世の中にとってプラスになる)ことと書かれています。

価値の大きさは、実用的> 感情的>社会的の順ですが、豊かになると社会的>感情的 >実用的の順に逆転するとおっしゃっています。確かに最近は世の中のプラスになるこの社会的価値に注目が集まっていますし、CSRやSDGSなどへの企業の取り組みも比重が高まっていますね。

これらの価値を提供する生産者とこの価値を買ったり評価する価値の消費者が存在する生態系、考え方はシンプルでとても分かりやすいと思いました。世界とは何なのかという問いに対し、このように分解してロジカルに進めていくと頭の中が整理されます。

まとめ

このほか、生態系については生産者と消費者の両者が自発的に価値をやりとりしてくれる仕組みを提供する設計者の存在、一つの生命のように捉える「散逸構造」、より強固にしていくために改善を繰り返していくこと、参加者を惹きつける仕掛けが必要だと続きます。
そして未来は世界を創ることが仕事になると

更に、競争から創造の世紀へ、ポストメタバースの新世界と話は深まっていきます。
20世紀は論理的に考えて行動する力が求められたが、21世紀は新しい世界を創造する力が求められるようになる。VUCAの時代、生態系は本領を発揮することになるのでしょうというのが著者の主張。
シニアのみなさんにも、ぜひ本書は読んでいただきたいと思います。

この生態系のことを読み進めていくと、現実の自分が置かれている環境、会社や部署を連想される方も多いのではないでしょうか。世界を創るとは、まず自分の世界を認識して再定義することが大切だということ、今まであまり意識しなかったことを学ばせて頂きました。

シニア世代はショルダータイプの大きな携帯電話、DOS/VのPC、ダイアルアップのネットワークと、今思えばノスタルジーしか感じられない時代の変革期をリアルで過ごしてきた世代。
今回紹介されている世界2.0のワールドは逆に抵抗感なく受け入れられるような気がするしワクワクします。

人は今日までに多くの過ちを犯し、多くの犠牲を払い今がある。メタバースによりシミュレーションを行い検証後の正しい選択を実行することで過去に冒してきたような過ちはなくなる。
もっと未来のことを真剣に考えて新たな素晴らしい世界を創っていかなければと強く感じました。

メタバースとかWeb3の知識を得るだけではなく気づきをたくさん与えて頂きました。
非常に大きな成果を得られたことに感謝です。

新しいテクノロジーの情報が世に溢れています。次はこれもよく聞く「NFT」について理解が深められればと思います。参考書として天羽健介さん増田雅史さん編著の「NFTの教科書」をセレクト。
インターネット以来の「革命」がはじまった!次回はこのあたりを読み込んでみましょう。

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